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連載コラム2021.03.24

連載コラム Vol.30 –イングランド東部「ノーフォーク」の大自然を2泊3日で体験

佐藤丈春佐藤丈春

英国で2回目のロックダウン中に、現地の洋服メーカーより春物撮影のスタイリング仕事を依頼され、ノーフォークに行く機会に恵まれました。コロナ禍で世界中のファッションブランドや店舗が大打撃を受ける中、このメーカーの売り上げは順調なようです。なぜなら、創業より高級パジャマ、ガウンやラウンジウエアに特化しており「ステイホーム」特需でオンラインでの売り上げが急増したからです。このブランドのように生産数や店舗数が元から限られていて、商品一つ一つのクオリティが高く(値も張りますが)かつ流行に左右されない商品を展開するブランドはパンデミックに耐えられるということが明らかになったと思います。トップショップ、ローラアシュレイ、ブルックスブラザーズ、J.Crewなど「質より量」を追求して商品数・店舗数を拡張し続けた会社はコロナ禍以前から経営に苦しみ、そしてコロナ禍がダメ押しとなって破産申請をしています。
英国全体で、1回目のロックダウンではトイレットペーパーの買い占めなどのパニック行動が見られましたが、2回目は皆が落ち着いて行動していたのが良かったと思います。ロックダウン中でも「仕事のための外出」は許可されていたので、ロンドンからおよそ車で2時間かけて行った(高速道路は、やはり普段より空いていました)イングランド東部の美しいノーフォークの海辺の様子を伝えようと思います。

撮影クルーで滞在したのはこの「Norfolk Mead Hotel」。「Mead」ミードとは蜂蜜酒の意。
18〜19世紀の間に建てられた家(指定保存建築)を改装し、16部屋のホテルとして運営している
英国の伝統的な壁紙を貼った内装。賑やかな壁紙にもかかわらず、色彩とコンセプトのおかげか、
とても気持ちが安らいだ
撮影現場のひとつとなったプライベート・ハウス。とあるイギリス人建築家によるもの

日本でもファッションアイテムとして知られる「ノーフォークジャケット」は、この地に由来しているとされるのが通説です。このジャケットは、19世紀に狩猟用に開発されたツイードのジャケットで、年配の男性が長年着込んで味の出たジャケットをまとって、ロンドンの街や英国の田舎道を歩いているのを見かけることもしばしば。

家の目の前には海が広がる。ボートで発着できるようデッキがある
早朝のホテル前の光景、霧に包まれた幻想的な風景。空気も新鮮だった

大自然に恵まれたノーフォークでは、到着するや否や空気の綺麗なことに気付かされ、約150kmにもわたる海岸ではアザラシが冬眠し、自然保護区として厳重に管理されています。我々は撮影許可を取って海岸での撮影もしましたが、撮影できる範囲は限られていました。撮影中、頻繁に係員が見回りに訪れ、アザラシに数メートルの距離にまで近づいてスマートフォンで撮影する通行人たちに注意している光景もしばしば。また通りすがりの人が「アザラシを刺激しないでね」と話しかけてきたりもしました。それだけアザラシは現地の人々に愛されている模様です。

ビーチの様子。写真中央にアザラシが横たわっているのが分かるだろうか
プライベート・ハウスの周り。時間がゆっくりと流れている空間だった

この地域には、英国の中流階級でリタイアした人たちが家を持ち、第2の人生を楽しんでいるようです。我々が撮影で使用した家は、そういった人たちが居を構える地区に、とあるイギリス人の建築家が設計したもので、プライベートな海へのアクセスがあり、もっとも日照時間の短い時期だったとはいえ、暖かい冬の日差しと優しい潮風に包まれ、贅沢な時間を過ごすことができました(撮影で慌ただしかったですが)。コロナ禍が一刻も早く終息することを願い、そして再び海外旅行ができるようになった暁には、癒しのノーフォーク、おすすめですよ!

佐藤丈春(さとう・たけはる)
1976年東京生まれ。2005年に渡英、2007年に英国王立芸術院卒業。グローバル情報誌『モノクル』に創刊から関わり、ファッションディレクターとして7年間努めた後、2014年独立。現在は英国・欧州ファッションブランドの広告・カタログのスタイリングやアートディレクションを中心に活動する。

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