夏が終わる直前、ポルトガル領はマデイラ島に行ってきました。以前この連載第4弾でリスボンについて触れましたが近年の格安観光ブームで若者を多く見かけるリスボンとは対照的に、退職された人達が人口のほとんどではないか? というくらいシルバー世代の多い場所です。ロンドンからマデイラには直行便で4時間で着きますが、飛行機に乗った時から、乗客のほとんどが年配の方々でした。
これには、現地の「常春気候」が理由と言われています。ポルトガル領とはいえ、リスボンよりモロッコの方が近く、年間平均気温が20度。真夏でも30度を超えることは稀で、小さな島であるために常に涼しい海風が吹いており、過ごしやすいからでしょう。「熱中症」にかかることはまずありません。そういう気候の中で美しい大自然に触れることができるため、例えばマデイラ国立公園には世界中からトレッキング・ファンが集まってきます。
僕が滞在したホテルでも、トレッキングブーツ、専用のウエア、リュックサックに身をまとい、早朝に出かけていく人達を見かけました。退職したとはいえ、トレッキングをするだけ元気なシルバー世代の方は多いですね。
マデイラといえば、マデイラ・ワインをご存知の方もいらっしゃるでしょう。起源は諸説あるようですが、16世紀頃の大航海時代にマデイラからワインをインドに輸出していた際、保存料としてサトウキビをワインに混ぜていたそうで、灼熱の長い航海からマデイラに戻ってきた在庫(あるいは船に忘れ去られていた樽?)を試飲したところ「うまい!」という話になり、それが現在の醸造法に受け継がれています。マデイラ・ワインの大ファンである僕は、ワイン工房「D’Oliveiras」「Blandy’s」を2軒見てきました。いずれも19世紀前半に創業の老舗です。見学ツアーにも参加し、とても勉強になりました。
ホテルは「Atrio」と「Belmond Reid’s Palace」をはしご。前者はフランス人夫婦がオーナーで、2001年に創業の家族経営。22室とこじんまりとした、山を登ったところにあるホテル。後者は1891年オープンの老舗で、英国のウインストン・チャーチルも首相時代に滞在したところです。それぞれの特徴を体験することができました。
レストランで気に入ったのは「Kampo」とその姉妹店で今年の6月にオープンしたばかりの「Akua」。ポルトガル料理の現代版で、地産地消のクリエイティブなメニューに舌鼓を打ちました。マデイラには他にも美しい海水浴スポットなどがあります。ワインが好き、食が好き、アウトドアが好きという方には、マデイラは完璧な場所としか思えません!
佐藤丈春(さとう・たけはる) |