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連載コラム2019.10.04

連載コラム Vol.22 – シルバー世代ひしめく「マデイラ」で夏の終わりを堪能

佐藤丈春佐藤丈春

夏が終わる直前、ポルトガル領はマデイラ島に行ってきました。以前この連載第4弾でリスボンについて触れましたが近年の格安観光ブームで若者を多く見かけるリスボンとは対照的に、退職された人達が人口のほとんどではないか? というくらいシルバー世代の多い場所です。ロンドンからマデイラには直行便で4時間で着きますが、飛行機に乗った時から、乗客のほとんどが年配の方々でした。
これには、現地の「常春気候」が理由と言われています。ポルトガル領とはいえ、リスボンよりモロッコの方が近く、年間平均気温が20度。真夏でも30度を超えることは稀で、小さな島であるために常に涼しい海風が吹いており、過ごしやすいからでしょう。「熱中症」にかかることはまずありません。そういう気候の中で美しい大自然に触れることができるため、例えばマデイラ国立公園には世界中からトレッキング・ファンが集まってきます。

ポルト・モニスの海水浴場。海水をそのまま取り入れたプールで、自然と調和したデザインが秀逸。水は冷たいがとても新鮮

僕が滞在したホテルでも、トレッキングブーツ、専用のウエア、リュックサックに身をまとい、早朝に出かけていく人達を見かけました。退職したとはいえ、トレッキングをするだけ元気なシルバー世代の方は多いですね。
マデイラといえば、マデイラ・ワインをご存知の方もいらっしゃるでしょう。起源は諸説あるようですが、16世紀頃の大航海時代にマデイラからワインをインドに輸出していた際、保存料としてサトウキビをワインに混ぜていたそうで、灼熱の長い航海からマデイラに戻ってきた在庫(あるいは船に忘れ去られていた樽?)を試飲したところ「うまい!」という話になり、それが現在の醸造法に受け継がれています。マデイラ・ワインの大ファンである僕は、ワイン工房「D’Oliveiras」「Blandy’s」を2軒見てきました。いずれも19世紀前半に創業の老舗です。見学ツアーにも参加し、とても勉強になりました。

「D’Oliveiras」の内装
「D’Oliveiras」でのメイン・イベントはもちろんテイスティング。3年、5年物などを少しずつ試すことができる

ホテルは「Atrio」と「Belmond Reid’s Palace」をはしご。前者はフランス人夫婦がオーナーで、2001年に創業の家族経営。22室とこじんまりとした、山を登ったところにあるホテル。後者は1891年オープンの老舗で、英国のウインストン・チャーチルも首相時代に滞在したところです。それぞれの特徴を体験することができました。

山の上に位置する「Atrio Hotel」。中庭のプールでくつろぎながら大西洋の絶景を堪能できる
「Belmond Reid’s Palace」のプライベート・エリアを俯瞰。シュノーケリングで魚の群れを見ることができた
「Belmond Reid’s Palace」のプール脇でサングリアを堪能。マデイラ産の白ワイン・サングリアは思い出に残る逸品
「Belmond Reid’s Palace」の名物「英国アフタヌーン・ティー」。20世紀初頭に英国から旅客船・貨物船が来るようになってからの輸入文化を受け継いでいる。調子に乗ってシャンペンも頼んでしまった
フルーツの名産地マデイラならではの盛り合わせ。中央と右にあるのが「タマリロ」というナス科の果物

レストランで気に入ったのは「Kampo」とその姉妹店で今年の6月にオープンしたばかりの「Akua」。ポルトガル料理の現代版で、地産地消のクリエイティブなメニューに舌鼓を打ちました。マデイラには他にも美しい海水浴スポットなどがあります。ワインが好き、食が好き、アウトドアが好きという方には、マデイラは完璧な場所としか思えません!

「Kampo」にて食した現地スタイルのスパゲティ。麺は数cmと短く、イカ墨とバターであえてある

佐藤丈春(さとう・たけはる)
1976年東京生まれ。2005年に渡英、2007年に英国王立芸術院卒業。グローバル情報誌『モノクル』に創刊から関わり、ファッションディレクターとして7年間努めた後、2014年独立。現在は英国・欧州ファッションブランドの広告・カタログのスタイリングやアートディレクションを中心に活動する。

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