連載コラム2020.05.08

連載コラム Vol.26 – ロンドン・ロックダウン

佐藤丈春佐藤丈春

皆様、ご無沙汰しております。こちら英国では、3月23日の夕方にボリス・ジョンソン首相が「You Must Stay at Home」と力強く演説してから、ロックダウン(都市封鎖)が続いています。この原稿を書いている時点で、ロックダウン6週目です。日本に住む友人から「都市封鎖ってどんな感じ?」と聞かれることが多いので、僕の視点でどんなことが起こっているか、お知らせします。

ロンドン市内では、薬局やスーパー、飲食品販売店を除いて全店舗が閉まっています。レストラン、バー、カフェ、ナイトクラブ、デパートや洋服屋などは全て閉店。レストランは一部、キッチンのみを稼働させ、デリバリー対応をしています。営業している薬局やスーパー、フードマーケットでは一度に店内に入れる人数を制限し、人との距離を2メートル以上とるルールを実施しているので(ソーシャル・ディスタンス)、行列ができることもしばしば(写真参照)。

地元のフードマーケットでの一コマ。店内のレイアウトもコロナ対策で変わり、客が2メートル間隔を開けて順番に買い物をする仕組み。地面のサインで示しているように、右側から店に入り、左側から出ていく。

公共交通機関は運行していますが、本数が少なく、駅によっては閉鎖しています。空港も運営していますが、飛行機の発着数が激減しているのは言うまでもありません。

ロンドン・ブリッジ駅の外側。同じく金曜日の夕方で、通常であれば車・人・サイクリストでごった返す。非常に閑散としている。

「Work from Home」つまり在宅勤務が以前から浸透している英国では、安全を期すため3月23日の首相演説前からこれを始めた人たちも少なくありません。実際、この演説の約1週間前に外出した際に、今まで見たことの無い静かなロンドンを目の当たりにしました(写真参照)。ですから政府からの指示が出る前に外出を自粛し、在宅勤務を決断した人や企業があったと言えます。こちらの大手企業で働く友人が「やることさえ期日までにやっていれば、自宅で勤務していても、誰も始業・終業時間をチェックしてこないよ。お互い様だからね」と笑っていました。今後、日本にも在宅勤務がもっと浸透すると良いですね。

3月15日(日)の午後1時、つまりジョンソン首相のロックダウン演説8日前に撮影した、オックスフォード・ストリートの人通り。ナイキ、H&M、有名デパートなどがひしめき、毎週日曜の午後は歩道が人で溢れるので、いかに空いているかが伝わるかと思う。あらゆる店舗で、閑古鳥が鳴いていた。
ロンドン・ブリッジ駅構内。こちらもロックダウン演説前の、3月20日(金)の午後4時頃。通常は金曜日の夕方は東京の丸の内駅と同じくらいごった返すが、ご覧の通り。

ロックダウンによって、ほとんどの人たちが家に閉じこもる中、ポジティブな要素もあります。毎週木曜日の夜8時に、多くの人が窓際やバルコニーに出て「NHS」(National Health Service)の医療スタッフを励ます拍手をします(動画参照)。これを見ると、ロンドンはエネルギッシュな街だなと、改めて感じます。

National Health Serviceの医療スタッフを応援するため、人々が窓際やバルコニーに繰り出し、拍手する一コマ。毎週木曜日の午後8時に全英で行われている

 

また、上記生活必需品の買い出し、及び1日に1回の運動は許可されているので、僕は週2回ロンドン中心部でランニングをしていますが、感じるのは「空気の質が良くなった」こと。車の数が激減したからです。英国公共放送「BBC」によると、ロックダウン開始の3月24日からイギリス全土において一気に、主に車からの有毒ガス排出量が減り、都市によっては60%も排出量がダウンしたそうです。先日快晴の日があり、食料品の買い出しに行った際、ロンドンでは暫く見たことのなかった深い青空を見て、感動しました(写真参照)。今回のロックダウンを機に、世界の主要都市で排気ガスが激減しています。今年元旦の『NHKスペシャル』で、気候変動に歯止めをかけるためには、今年から温室効果ガスを減らさないと、地球環境は後戻りできないのではないか、という科学者の分析を紹介していたのを思い出しました。コロナウイルスは皮肉にも、そのタイミングで登場し、大自然に休息の機会を与えているようです。

ロンドン中心部では珍しく、深い青空が美しかった4月19日(日)。飛行機も全くといっていいほど見当たらない。
同日、別の角度から、ロンドンの深い青空を撮影。この青空を、もっと頻繁に見たいと思うのは、決して自分だけではないはず。

佐藤丈春(さとう・たけはる)
1976年東京生まれ。2005年に渡英、2007年に英国王立芸術院卒業。グローバル情報誌『モノクル』に創刊から関わり、ファッションディレクターとして7年間努めた後、2014年独立。現在は英国・欧州ファッションブランドの広告・カタログのスタイリングやアートディレクションを中心に活動する。

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