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連載コラム2020.05.22

連載コラム Vol.28 –「ブレクシット」後の人気移住先となるか? 初秋のアントワープ

佐藤丈春佐藤丈春

混迷を極める英国の欧州離脱「ブレクシット」議論。日本では「ブレグジット」と濁って表記・発音していますが、英国公共放送『BBC』では「ブレクシット」と濁らずに発音していますし、僕もその方が言い易いと思っているので、それにならいます。最近、僕の友人数名(いずれもヨーロピアンで、ロンドン在住)が「もしブレクシットが実現してしまったら、アントワープに引っ越すかもしれない」と言っていました。タイミングを同じくして、最近『時事通信』が、今年6月だけで英国人176人がベルギー国籍を取得したと、報道していましたね。またファッションの都としても有名(アントワープ王立芸術アカデミーが、ドリス・ヴァン・ノッテンなど世界で有名なファッションデザイナーを輩出)であるため、初秋のアントワープで週末を過ごすことにしました。アントワープには、どんな魅力があるのか?
結論からすると「コスモポリタン」つまり異人種が混ざり、複数言語が通じ(英語も通じます)、よって外国人が住みやすく、街が綺麗に整備されているところ、そしてロンドンに比べて住宅の値段が安いこと(ロンドンが高すぎるだけなのですが)などがアントワープの魅力であろうと思います。自転車レーンも綺麗に整備されており(コペンハーゲンに似ています)、皆運転も穏やかなため、とても平和な印象も受けました。
ロンドンからユーロスターでブリュッセルに行き(2時間)、電車に乗り換えて45分ほど北に移動するとアントワープに到着。ベルギーには「ベルギー語」は無く、地区によって、フランス語圏・オランダ語圏・ドイツ語圏に分かれており、南部ブリュッセル(フランス寄り)での公用語がフランス語、アントワープでのそれがオランダ語。実際アントワープからもう少し北に行くとオランダとの国境があります。ブリュッセルで電車に乗った時のアナウンスはフランス語だったのが、アントワープに近づくに連れてオランダ語に切り替わりました。

アントワープ中央駅は必見。1905年オープン、今から10年ほど前に一部改装。2009年『ニューズウイーク』誌で「世界で最も美しい鉄道駅」第4位に選出(visitantwerpen.beによる)

滞在したのは「Hotel Pilar」。2年前にオープンしたての、居心地の良い空間でした。建物自体は数世紀に渡るものでありながら、地上階はオープンカフェ・レストランとショップが複合しており、従って気軽に入ることができ、伝統的なホテルの入り口とは異なります。新鮮な朝食が味わえて、近所のクリエイティブ風の若者が、ラップトップを開いて作業している風景を見られたのも、今風だと思いました。

「Hotel Pilar」のカフェ・レストラン。左手奥がホテル受付。飾りのバランスの取り方にセンスを感じる
新鮮な朝食。野菜、ハム、チーズに卵。フルーツジュースにコーヒーも注文。
歴史的建造物を利用した「Hotel Pilar」の夜の外観。地上階がテラス、中央部分がショップ入り口

ホテルのスタッフによると、10年以上前はこのエリアは少し忘れ去られた、特に何も無い住宅街だったそうです。それが若者達によって、活気のあるスポットとなったのですね。食のハイライトは「Fisk Bar」つまりフィッシュ・バー。鮮魚とベルギー産のワインの組み合わせが絶妙でした。「コスモポリタン」アントワープ、ぜひ訪れてみてください。

「Fisk Bar」にて食した、魚介のスープ。ワインで煮込んだ豊かな味わいだった
「Wijnkasteel」つまりワイン・キャッスル(ワインの城)の白ワインが僕にとって大ヒット。ローマ帝国によって、ベルギー東部の小さな城にブドウとワイン生産が持ち込まれ、それが受け継がれている(一時中断の時期あり)。
「クリーク・ブーン」というベルギー産のチェリービール。晩夏を祝うべく試したみた。チェリーの甘みが絶妙

佐藤丈春(さとう・たけはる)
1976年東京生まれ。2005年に渡英、2007年に英国王立芸術院卒業。グローバル情報誌『モノクル』に創刊から関わり、ファッションディレクターとして7年間努めた後、2014年独立。現在は英国・欧州ファッションブランドの広告・カタログのスタイリングやアートディレクションを中心に活動する。

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