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連載コラム2016.10.26

連載コラム Vol.9 – サステイナブルな英国のカントリーライフ

佐藤丈春佐藤丈春

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先日イギリスの南西部ニューフォーレストにある「ザ・ピッグ」というホテル&レストランに泊まり、感動したのでオススメしようと思います。ロンドンのウオータールー駅から電車で2時間半から3時間後にたどり着くブロッケンハースト駅で下車し、タクシーで5分程度で到着します。ちょっとした坂を上がると、そこには英国に昔から広がる田園風景があり、中心部にはカントリーハウスが登場します。

17世紀初頭に建てられてから幾度か改築されながら現在に至るこの建物は「ザ・ピッグ」である
17世紀初頭に建てられてから幾度か改築されながら現在に至るこの建物は「ザ・ピッグ」である

本来は1602年に建てられた、当時の床屋さん達が泊まる家屋で、1853年に初めて王室が個人に対する賃貸を始めたそうです。2011年から「ザ・ピッグ」として30の客室とレストランが合わさったホテル兼レストランとして運営しています。その名の通り豚肉料理を得意としていますが、他にもチキンや魚料理もあります(海も近いです)。

深夜まで営業しているバー。様々なスタイルの家具を集めながらも調和を保っている
深夜まで営業しているバー。様々なスタイルの家具を集めながらも調和を保っている

僕が滞在したのは平日だったのですが、レストランが地元の人達に大人気で、ディナーも翌日のランチも大盛況でした(レストラン利用のみも可能)。人気の秘訣は、食材の手配を出来る限りホテルの周りにある「キッチンガーデン」から行うこと。ホテルの裏手には畑があり、野菜が種類ごとに整然と栽培され、仕入れは徒歩。他にも豚、鶏、牛や馬を放牧しています。キッチンガーデンから手に入らないもののみ、半径40km以内から手配しており、メニュー全体の95%の食材をこのエリアで揃えています。全ての食材が新鮮で輸送コストもあまりかからないことから、我々が払う値段も押さえられているのです。空輸での仕入れ、車での食材輸送も極力抑えることで温室効果ガスの排出も激減します。

ホテル裏にある「キッチンガーデン」。ご覧のレタスの他アスパラガスやほうれん草など多種を栽培
ホテル裏にある「キッチンガーデン」。ご覧のレタスの他アスパラガスやほうれん草など多種を栽培
キッチンガーデンの隣にある風景。鶏や豚を放し飼いにしている。放し飼いされている鶏の卵の味は格別
キッチンガーデンの隣にある風景。鶏や豚を放し飼いにしている。放し飼いされている鶏の卵の味は格別
「本日のメニュー」の裏面にはこの通り、どこからどの食材を手配しているかを明確にしている
「本日のメニュー」の裏面にはこの通り、どこからどの食材を手配しているかを明確にしている

イギリスやヨーロッパでは、このように「サステイナブル」にホテルやレストランを運営する考え方が広まってきているのですが「ザ・ピッグ」はその徹底ぶりが他のホテルに比べて群を抜いていると思います。メニューもなんと、1日のうちに2、3回刷り直すのだそう。なぜならば、常に新鮮な食材が入ってくるので、採れたものに臨機応変にしているからだとか。

サン・ラウンジ風の空間が広がるレストラン。カラフルなタイルがごちゃ混ぜになっているフロアが見える
サン・ラウンジ風の空間が広がるレストラン。カラフルなタイルがごちゃ混ぜになっているフロアが見える
とろーりと調理された豚肉。下の部分で歯が見えていて残酷な感じはするが、中央右に見えるアップルソースをつけて食べる
とろーりと調理された豚肉。下の部分で歯が見えていて残酷な感じはするが、中央右に見えるアップルソースをつけて食べる

内外装にもセンスが光ります。英語で「Shabby Chic」つまり「古びたオシャレ」と描写されるこのスタイルは、ツタのからまった外壁、年代やスタイルの異なるアンティークのソファやテーブルがごちゃ混ぜになったバーやラウンジ、昔の学校の椅子やモザイクのタイルを床に使用したレストラン、客室に飾られた18世紀の植物標本など「調和のとれたカオス」なのです。

激しい気候変動を世界中で感じる今日。季節を問わない、例えばマグロやウナギを乱獲することによる数の激減。近年は環境問題が顕著になってきています。物資の調達方法を原始的に戻し、昔の人達がそうしていたように季節ごとに利用できる食材を味わうこと、原点に戻ろうとすることが「最先端」なのでしょう。「ザ・ピッグ」はハンプシャー以外にもサマーセットやドーセットにもあります。今年の7月には約14平方キロメートルの敷地で「ザ・ピッグ・アット・コーム」がデヴォンにオープンするそうなので、いずれかを是非試してみてください。

佐藤丈春(さとう・たけはる)
1976年東京生まれ。2005年に渡英、2007年に英国王立芸術院卒業。グローバル情報誌『モノクル』に創刊から関わり、ファッションディレクターとして7年間努めた後、2014年独立。現在は英国・欧州ファッションブランドの広告・カタログのスタイリングやアートディレクションを中心に活動する。

この記事に関連するキーワード:イギリスカントリーライフ海外旅行

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