連載コラム2016.10.26

連載コラム Vol.5 – イビザ島の終わらない(?)夏

佐藤丈春佐藤丈春

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本連載の3回目にマヨルカ島を紹介した際に少し触れましたが、マヨルカの隣に位置するスペインのイビザ島も魅力的です。僕は8月下旬にこの島を、2年ぶりに訪れました。3回目に触れた通り「カフェ・デル・マール」の音楽コンピレーションで日本での認知度も高まったイビザは1960年代、国外からヒッピーが訪れる島になりました。それ以前の1950年代、すでにヒッピー・ライフに近い自給自足の生活が地元には根付いていたようです。さらにその前の1936年以降にはスペイン内戦の避難民がたどり着いた島でもあります。

サンセット・アシュラムの様子。DJホセ・パディーヤの選曲、夕焼けそしてカクテルの3点セットは旅のよい思い出になります
サンセット・アシュラムの様子。DJホセ・パディーヤの選曲、夕焼けそしてカクテルの3点セットは旅のよい思い出になります

60年代以降にはボブ・ディラン、ボブ・マーレーなどがライブを開催するなど、この島は徐々に若者達に「クール・スポット」として知られるようになりました。政治や社会に対して「アンチ」な人々を惹き付けるマグネットが、もともとこの島にはあったのでしょう。現在では世界のトップDJが夏中入れ替わり立ち代わりで訪れ、様々なナイトクラブで演奏するようになりました。しかしイビザは単なるパーティスポットだけではありません。素晴らしいビーチが沢山あります。食も素晴らしい。各自の好みでビーチだけの休日、パーティ三昧の日々、あるいは両方をうまく混ぜたホリデーを満喫することができるので、島には老若男女が集います。家族連れも多いです。

サンセット・アシュラムで見える夕焼けがこちら。透き通った感じが伝わるでしょうか
サンセット・アシュラムで見える夕焼けがこちら。透き通った感じが伝わるでしょうか
70年代から続くヒッピーマーケット。地ビールを買えて、隣国チュニジア製のタオルなどを仕入れている店や、ハンドメイドのレザー製品を売っている所などがあります
70年代から続くヒッピーマーケット。地ビールを買えて、隣国チュニジア製のタオルなどを仕入れている店や、ハンドメイドのレザー製品を売っている所などがあります

イビザの夏に終わりはありますが、長いです。通常5月の第1週からナイトクラブが徐々に営業を開始し、最終週には主要クラブがオープニング・パーティを開催しイビザの夏が本格的に始まります。クロージング・パーティは9月の最終週ですから、この島の夏はまる5ヶ月間。地中海性の気候のため5月も9月も日中は充分に暑くなります。「夏が終わってほしくない!」と思うヨーロピアンの友達が9月に、夏の最後の太陽を追い求めてイビザに行ったという話を聞きました。5月に夏を先取りすることもできます。日本の本格的な夏は7月と8月の2ヶ月で、あっという間ですよね。僕が住んでいるロンドンでは、今年は夏らしい気温になったのは7月の1週間程度で、ここ数年同じ調子なのでうんざりします。事実僕がイビザにいた間ロンドンでは雨続き、うち1日は土砂降りだったそうです。

面白いなと思ったスポットをひとつ。「サンセット・アシュラム」。イビザの夕焼け、カクテルに心地よい音楽を堪能できる場所。ビーチにあるこのオープンテラスのバーは「島でベストの夕暮れを満喫できる」ことで評判です。僕達が訪れた当日の夕焼けのタイミングで「カフェ・デル・マール」でレジデントDJとして世界の音楽界に名を馳せたホセ・パディーヤがDJをしていました。透き通った夕焼けとおいしいお酒、リラックスできる選曲のパッケージは、特に日頃ストレスを抱えている人々にとっては、それから解放させてくれるパワーを持っていると思います。日没をはっきり、水平線で確認できます。そして日没と同時に皆が拍手をし、その現場に、妙な一体感が生まれるのです。大自然のコンサートを見ているような感覚になります。これは現地に行かないと、お分かりいただけないでしょう。

とあるビーチで夕焼けを鑑賞する人々。ここでは水平線で確認できる日没と同時に盛大な拍手が起こっていました
とあるビーチで夕焼けを鑑賞する人々。ここでは水平線で確認できる日没と同時に盛大な拍手が起こっていました

字数の関係でオススメのスポットを紹介しきれませんが、北半球において夏は7〜8月だけでは無い、という世界があります。それから今回は時間の都合上行けませんでしたが、イビザから30分程度フェリーに乗るとたどり着ける「フォルメンテーラ島」も大変魅力的ですよ。

ご覧の通り海の青さ、そして自然を鑑賞するにもイビザ島は適しています
ご覧の通り海の青さ、そして自然を鑑賞するにもイビザ島は適しています
カラ・カルボというビーチにあるレストランで見つけた白身魚の塩漬け
カラ・カルボというビーチにあるレストランで見つけた白身魚の塩漬け
2004年開業のラ・パロマにて。新鮮なイワシと野菜のマリネ、ほんのりとまぶされたワサビとの組み合わせが秀逸
2004年開業のラ・パロマにて。新鮮なイワシと野菜のマリネ、ほんのりとまぶされたワサビとの組み合わせが秀逸

佐藤丈春(さとう・たけはる)
1976年東京生まれ。2005年に渡英、2007年に英国王立芸術院卒業。グローバル情報誌『モノクル』に創刊から関わり、ファッションディレクターとして7年間努めた後、2014年独立。現在は英国・欧州ファッションブランドの広告・カタログのスタイリングやアートディレクションを中心に活動する。

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