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連載コラム2016.10.26

連載コラム Vol.2 – 20世紀の名残をフォルテ・デイ・マルミで味わう

佐藤丈春佐藤丈春

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夏休みも終盤になりましたが、皆さんはどこで休暇を過ごしましたか? これから休暇を取る方々に、イタリアの避暑地フォルテ・デイ・マルミをオススメします。ミラノ、ローマやフィレンツエなどの主要都市名は知っていても、この地名を聞いた事が無い、という方もいらっしゃると思います。ではどこにあるのか? 地図上でイタリアの形はブーツに例えられますが、その付け根の向かって左側、つまり西岸はトスカーナ州の北部に位置します。

この地区の何が特別なのか? それはイタリアの多くの地域に共通していることですが「知的な歴史」です。19世紀の後半には、既にイタリアの貴族、ドイツやフランスなどヨーロッパ各地からのジャーナリスト、芸術家や詩人などの知識階級から避暑地として愛されていました。

ホテル一つをとっても「知と歴史」に満ちています。例えば先月僕が宿泊して感激したのがホテル・アウグスタス。スタッフにも「日本人観光客は来ないんです」と知らされて驚いたのですが、日本語でネット検索をした限りでは、このホテルに関するまともな記事がないため、納得。なのでここをご紹介します(決して僕が日本人初の滞在者とは思いませんが)。

ホテル・アウグスタスの入り口。赤、緑が濃く、白い石との配色が美しい

ホテル・アウグスタスの入り口。赤、緑が濃く、白い石との配色が美しい

ホテル玄関。ペセンティ家に雇われた家具デザイナーのオズヴァルド・ボルサーニ設計をほぼ保存

ホテル玄関。ペセンティ家に雇われた家具デザイナーのオズヴァルド・ボルサーニ設計をほぼ保存

スイートの内装の一例。これはアニエリ家によるもので、当時の状態をほぼ保っている

スイートの内装の一例。これはアニエリ家によるもので、当時の状態をほぼ保っている

「アウグスタス」の由来はアウグスタ・ペセンティという、芸術家のパトロンをしていた裕福な女性です。1937年にペセンティ家が避暑のためヴィラ・ペセンティをこの地に作ったのですが、アウグスタが1953年にホテルに拡張・改装しました。因に時代は混ざりますが、ジミ・ヘンドリックス、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジョディ・フォスターなどがこのホテルにチェックインしたそうです。

その後このホテルはイタリアが誇る車メーカー「フィアット」を創業したアニエリ家(3代に渡ってこのホテルの常連でもあった)によって買い取られました。1926年から隣のヴィラを所有していたアニエリ家は、ここを合体させます。ホテルとビーチの間には大きな道路があるのですが、これは第2次大戦後に舗装されたもので、ここを渡らなくてもいいようアニエリ家は「工夫」しました。その「工夫」とは「美しい地下道」を作ったことです。ホテルとビーチの往復一つとっても、アニエリ家とそのゲストのプライバシーを確保することが目的で、周辺を美しい松の木や花で囲みました。現在もこの道は残されており、ホテル滞在者が通れるようになっています。単なる移動も美しい「プレゼンテーション」の一部となっていて、感動しました。日本では、なかなかできない経験だと思います。

1969年にアニエリ家はこのホテルを売却しました。買い取ったのは、同ホテルのマネージャーだったニノ・マスキエット。一部を除いて当時の状態を残しているので、客室でも当時の名残を味わうことができます。いかがでしょう、興味が湧いて来ましたか?

ビーチに向かうプライベートの地下道を通りぬけ、上がって行く途中の風景

ビーチに向かうプライベートの地下道を通りぬけ、上がって行く途中の風景

ビーチではWi-Fiを完備。ハイテク・ジャパンもハイテクであり続けたいのなら見習うべきだ

ビーチではWi-Fiを完備。ハイテク・ジャパンもハイテクであり続けたいのなら見習うべきだ

ホテル付近で20年間経営しているレストラン「ロレンツォ」で味わう魚のクオリティと接客のレベルは超一流

ホテル付近で20年間経営しているレストラン「ロレンツォ」で味わう魚のクオリティと接客のレベルは超一流

佐藤丈春(さとう・たけはる)
1976年東京生まれ。2005年に渡英、2007年に英国王立芸術院卒業。グローバル情報誌『モノクル』に創刊から関わり、ファッションディレクターとして7年間努めた後、2014年独立。現在は英国・欧州ファッションブランドの広告・カタログのスタイリングやアートディレクションを中心に活動する。

この記事に関連するキーワード:イタリアフォルテ・デイ・マルミ海外旅行

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