皆様、春ですね。先日ミラノで、とあるイタリアブランドのカタログ撮影のスタイリングを手がけて来たので、初春のミラノをご紹介したいと思います。日本では桜が満開の頃、こちらヨーロッパでは夏時間となり、日本との時差はイギリスでは8時間、イタリアからは7時間となりました。これによって、現地での日が長くなり、気温も穏やかになったことも重なって、ミラノではナヴィリ地区(ミラノ南西部)のグランデ運河(人口運河)沿いに人々が平日でも夜遅くまで繰り出しています。運河沿いにはレストラン、ピッツエリアやバーなどが立ち並び、割と遅くまで営業しているため飲食に困ることはありません。
ナヴィリやトルトーナが盛り上がりを見せてきたのはここ10年くらいで、若者の数が増えました。そして飲食店の数も増えています。中心地からタクシーで15分程度、倉庫などもあり中心地より家賃は安く、大型クラブもあり、以前はやや「ゲットー」な感じが漂っていましたが、それが故に大型スペースを確保できることから多くのファッションブランドや eコマースの会社などがオフィスやショールームをオープン。
運河の北側にあるトルトーナ地区(昔からジョルジオ・アルマーニがテアトロ、つまりシアタースペースを構える。安藤忠雄氏による設計。アルマーニのファッションショーは毎回ここで開催)にNHホテルグループのデザインホテル「Nhow Hotel」(ナウ・ホテル)も約10年前にオープンし、意外性のある場所であることから話題になりました。ちょうど2000年代は「デザイン・ホテル」や「ブティック・ホテル」が世界で台頭した時期でもあり、ナウ・ホテルの登場も時流に乗っていたわけです。
ファッションウイークでは「ホワイト」という大型合同展示会もここトルトーナ地区で開かれ、世界中から多くのジャーナリストやバイヤーが訪れます。ナウ・ホテル、ホワイトなどがあるトルトーナ通りの美術館「Mudec(Museo delle Culture)では現在ジョアン・ミロ展を9月11日まで開催しています。ここは元々1904年に建てられた機械工場で、いくつかの会社が所有した後 1989年から10年間廃墟でした。1999年にイタリア議会がそこを買い取り、イギリス人の建築家デビッド・チッパーフィールドによって美術館に改装されました。建築やデザインが好きな方、必見ですよ!
イタリアで忘れてはならないのが「アート・オブ・ダイニング」。飲食のレベルは世界トップクラス、芸術的であり、見て美しく、食べて美しいということにこだわる点では、日本人は大いに共感できます。
今回これらの地区で、最近オープンしたので行ってみた、あるいは数十年前からあるのに今まで見過ごしてきた(僕がミラノに通い始めて10年くらいですが、まだ知らない場所が多いな、と思います)、というレストランをそれぞれ試すことができて、充実した飲食ツアーにもなりました。イタリア出張をすると、どうしても食い倒れてしまうのです!
佐藤丈春(さとう・たけはる) |