タビタス読者の皆様。はじめまして、ロンドンベースのファッションディレクター佐藤丈春と申します。今回からタビタス・マガジンにて月1回のコラムをお届けすることになりました。一年の約3割を英国外で過ごす僕が、旅先で見つけた面白い人、モノ、現象や場所などを僕の視点で紹介して行きたいと張り切っております。常に日本であまり紹介されていないコトに注目して参りますので、どうぞお見逃し無く!
第1回目はタイトルをご覧になると「ウイリアムズバーグがクールなのはもう知っているよ」という方は多いかもしれません。僕は18年前にこのエリアに短期間で住んでいた事があります(実はダンス修行のため。本当です)。当時は学生でマンハッタンに住む予算がなく、ここを選んだのですが、道で物乞いする人は少なくなく、近所で銃撃事件があったりでウイリアムズバーグは「ゲットー」でした。5年前に訪れた際には現地の友人に案内され、変わりゆくウイリアムズバーグに驚いたものですが、その進化を象徴するかのように、先月出張で訪れた時にたまたま「昨日オープンしたばかり」というショップを見つけました。
「バイ・ブルックリン」の第2号店です。その名の通り、この店で販売しているモノは全てメイド・イン・ブルックリン。始めたのはガイアさんという、マンハッタンの金融業界で働いていた女性。「自分の住むブルックリンでモノ作りする人達を支えたい」という熱意のもとに2011年に1号店をキャロル・ガーデンズ地区にオープン。ガイアさんは「ウイリアムズバーグは発展し、ブルックリン独自のスタイルを求めて訪れてくる人達が増えました。過去数十年間このエリアでモノを作り続けている人達がいることを知って、それらをキュレートしたギフトショップを開くには最適だと考えたんです」と2号店オープンのいきさつを語る。
その後にこのエリアに住むスウエーデン人の友人(30代前半、職種はクリエイティブ系)と夕食で再会。彼が「マンハッタンは目と鼻の先。だけど今はあっちに行かなくても、ウイリアムズバーグで全てが成り立つよね。飲食する場所も豊富だし、こっちに住んで自宅で仕事をする人も増えた。ニューヨークの一部ではあるけど、まるで別の街」と言っていたが、全くの同意。クラフトビールで今や世界に名を馳せるブルックリン・ブリュワリーがあり、昨年にはJ.クルーの直営店がオープンしてウイリアムズバーグが発展したことを更に象徴した。
1901年に建てられた工場を改装したワイス・ホテルのルーフトップ・バーには当日、天気がよかったこともあり、満員。目の前のこれらの現象と18年前の「ゲットー」であった同じエリアでの記憶が重なり、何度も顎が外れるような思いをした(実際には外れていませんが)。いくつかの不動産屋のウインドーを覗くと、いまやこのエリアで2-3ベッドくらいのアパートを借りると月3,000ドルは下らない模様(因に僕が住んでいた頃の1ルームアパートの家賃は、月に750ドルだった。今では不可能)。もはやウイリアムズバーグは「ゲットー」ではなく、そこに住むことがステータスとなるほど「ブランド」化したのである。
佐藤丈春(さとう・たけはる) |