ロンドンにベースを移して12年が過ぎましたが、スコットランドに生まれて初めて行ってきました。今回は現地で受け継がれた「衣・食・宿」の伝統がどう展開しているのか、2泊3日で発見した範囲でレポートしたいと思います。
ロンドンから電車で約5時間、車窓で展開する大自然を楽しみながらグラスゴーの中央駅に到着すると早速、スコットランド訛りの英語が耳に入ってきます。駅を出た瞬間の第一印象は「違う国に来た感じ」。ロンドンとは気候も、建物も異なることが理由です。1707年まで独立した国家でしたから、それもそのはず。公用語は英語と伝統のゲール語で、レストランの名前やメニューにもゲール語が出て来たために意味を知ろうと、質問したことがきっかけでスタッフとの会話が弾んだこともありました。
「宿」のハイライト。中央駅から歩いて約10分、丘の上にある(グラスゴーは勾配があります)ホテル「ダコタ・デラックス」にチェックイン。
この建物は60−70年代に出来たもので、以前は孤児院だったそうです。コンシュルジュ曰く「悲しい歴史を持つ建物が、ハッピーでスタイリッシュなホテルに生まれ変わったんだよ」。このホテルはグラスゴー郊外で育った起業家ケン・マクルーシュ氏によるもので、イギリス北部を中心にモナコも含めて数々のホテル、地産地消型のレストランをオープンして成功させた人です。現地の旬な食材をふんだんに使用するホテルのレストランも地元の人々に好評で、伝統的なスタイルをモダンに仕上げています。またサービスのレベルが非常に高いので、こういったホテルが世の中に増えることを願ってやみません。
次に「衣」のお話。「マッキントッシュ」というレインコートのブランド、ご存知でしょうか? 1823年にスコットランドで誕生した「ゴム引きコート」で有名なブランドであり、現在でもその製法は受け継がれ、日本でも人気のあるブランドです。独自に開発した薄い防水布2枚の間に天然ゴムを塗って圧着させてできた生地を、部品ごとにカットして(袖、ポケットや襟など)貼り合わせる際に特殊な接着剤を指で塗ります。1日中接着剤をつける作業を担当する人々、同じ工程を受け持つ父と子のひたむきな姿などを拝見するに、伝統を僕なりにサポートしていきたいと強く感じました。
最後に「飲」も含めた「食」の総括。今回はエディンバラにも足を伸ばしたのですが、ミシュランスターを獲得したガストロパブ「ザ・スクラン&スキャリー」、僕も定期的に豆をオンラインで仕入れているコーヒーショップ「アルチザン・ロースト」、そして日本人にも人気のスコッチ・ウイスキーの会員制クラブ「ザ・スコッチ・モルトウイスキー・ソサエティ」がハイライトです。
スコットランドで昔から営む大小のウイスキーメーカーと提携して、ここでしか味わえないウイスキーを楽しめます。ウイスキーとセットで楽しめるコースメニューを提供するレストランも上の階にあり。古い建物の外観は保存し、内装を現代風にアレンジして、とてもラグジュアリーな空間となっていて、オススメですよ。スコットランドの飲食はクリエイティブで、非常にレベルが高いと思いました。
佐藤丈春(さとう・たけはる) |