日本からはとても遠いアイスランド、いつか行ってみたいと思っていました。ロンドンからは飛行機で3時間程度とアクセスがよいので、夏のアイスランドで「白夜」を体験しようと、2泊3日で行ってきたのでご紹介します。因にトロントやニューヨーク、ボストンからも飛行機で5時間半程度なので、アメリカ・カナダからの観光客が非常に多いです。アイスランドといえばオーロラ、歌手のビョークなどが思い浮かぶかと思われますが、最近ではサッカーの欧州選手権2016で強豪イングランドを下し、ベスト8に進出するという快挙を成し遂げたのをご存知の方もいるでしょう。この島国の全人口はたったの30万人で、そのうちの約20万人が首都レイキャビクに集中しています。
到着して空港を出たとたん、ひんやりとした空気に包まれ、持参したコートを着ました。夏とはいえ僕が滞在していた時の最高気温は摂氏約12度。夜は7度くらいまで下がります。島全体が溶岩に覆われていて、背の低い草が少し生えている程度で、火星に来たような感覚になります(火星に草木はありませんが)。
「白夜」という言葉は知っていても、実体験しないとピンとこないものです。空港からホテルまでタクシーで向かったのですが、運転手曰く「夏はちょっと感覚がおかしくなるね。寝不足になるよ。水平線を眺めていると、夜中に太陽が水平線に触れずにまた昇り始めるんだ」。その言葉通り日没は無く、夜中の0時頃に日本でいう夏の夜7時くらいの光加減で「ようやく日が傾いたな」という感じです。英国・欧州でも日没が夜の9時や10時になるために夜更かしをしがちになります。アイスランド人がそうなるのも無理はないでしょう、というのも冬には日の出が朝の11時頃、日没が午後3時と太陽の下にいられるのがたったの4時間ですから。夏にはできるだけ長く外にいたい、と思うはずです。ホテルではカーテンをしっかり閉めないと、眠れません。この「白夜」の感覚を少しでも味わっていただくため、今回ご紹介する風景写真では撮影時刻を明記します。
滞在したのは「ホテル・ホルト」。1965年の創業以来内装はほとんどそのままで、クラシックな雰囲気が素敵です。ホテル内の至る所にアートが溢れており、特に「ギャラリー・レストラン」と「ギャラリー・バー」には地元のアーティストが20世紀に手がけた絵画が飾ってあり、オリジナリティ満載。ホテルの意思により、決して売られることのないアートだそうです。レストランも秀逸、それらアートに囲まれながら旬の地元食材を堪能できます。フランスのミシュランスター付きレストランでの勤務経験もあるエイリクソン氏によるノルディック料理にはクリエイティビティが漂い、例えばアイスランドの代表的なロブスター・スープにチョコレートが混ざっていたりと、意外性があるのです。美術館的な価値があり、最高級のアイスランド料理を味わえるレストランがあるホテル・ホルト。ぜひ試してみてください。
他にも観光スポットとして有名な「ブルー・ラグーン」(アイスランドの温泉です)に夜中(といっても明るいのですが)の1時まで滞在したり、日が沈まないためについつい飲み屋をはしごしてしまったり・・・、と「白夜」の2泊を堪能しました。次回はこの国でオーロラを体験してみたいなと思っています。
佐藤丈春(さとう・たけはる) |