連載コラム2016.10.26

連載コラム Vol.10 – 賀百万石の栄華を感じる旅

佐藤丈春佐藤丈春

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先日撮影の仕事で一時帰国していたため、週末を金沢と能登半島で過ごすことにしました。北陸新幹線が開通したことによって、金沢を身近に感じるようになったのがきっかけです。この地を江戸時代に治めていた加賀藩が、幕府を除いて大名中最大の百万石を所有し、地元で採掘できる砂金などを使用した美術工芸で都市文化を発達させたことは、皆さん学校で教わったことかと思います。

金城楼の豪華な入り口。屏風は18世紀に活躍した狩野永敬作。右端に掛かっている着物は先日他界された元女将さんが手作りされたのだそう
金城楼の豪華な入り口。屏風は18世紀に活躍した狩野永敬作。右端に掛かっている着物は先日他界された元女将さんが手作りされたのだそう

加賀と言えば前田家。今回、前田利家公にゆかりのある老舗料亭宿の「金城楼」に滞在し、感銘を受けたのでご紹介したいと思います。創業百十余年のこの宿は6室しかありません。元々は前田利家公の嫁に婿入りした前田対馬守の子孫が、明治維新の廃藩置県の折に居を移した折に建てた豪邸だったそうです。ですから部屋数が少ないのも納得。とてもエクスクルーシブなおもてなしを受けられますし、滞在人数が少ないことから館内には静寂が漂い、小さな日本庭園の眺めを楽しむことも出来ます。老舗料亭であるからこそ、ここの料理長にしか手に入れられない食材もあるとか。そういった旬の地魚や野菜、果物や地酒を堪能できるのも金城楼の魅力であります。

庭園の一部を中間から切り取る感覚はさすが。映画のスクリーンのよう
庭園の一部を中間から切り取る感覚はさすが。映画のスクリーンのよう
中央にこんにゃくが入った、濃厚な汁。器はもちろん輪島塗
中央にこんにゃくが入った、濃厚な汁。器はもちろん輪島塗

翌日は近江市場で地元鮮魚のランチを堪能し、金沢21世紀美術館、金沢城址などを見学。1泊2日でほぼ街を網羅できるコンパクトさが金沢の魅力でもある、と実感。その後に能登に向かい、夜は日本百景の一つ九十九湾沿いにある百楽荘に滞在しました。ここは九十九湾の水際で夕食を楽しむことができるのと、3年かけて掘った洞窟を抜けて入ることができる温泉が魅力です。九十九湾を眺めながら入る露天風呂はオススメですよ。

金沢で忘れてならない兼六園。前田家がおもてなしで利用していた
金沢で忘れてならない兼六園。前田家がおもてなしで利用していた
近江市場で食べた寿司。ネタは新鮮。シャリが握りきられておらず崩れやすいのが、江戸前に慣れた僕にとっては難儀だったが、これは北陸スタイルだろうか
近江市場で食べた寿司。ネタは新鮮。シャリが握りきられておらず崩れやすいのが、江戸前に慣れた僕にとっては難儀だったが、これは北陸スタイルだろうか

翌日は輪島に移動。輪島について触れる前に、能登半島へのアクセスが改善されると、もっと栄えるはず、ということを申しておきたいです。金沢から現地へはバスを使用しなければなりません。しかも2時間以上かかります。金沢では外国人観光客が多く目につきましたが、輪島では皆無でした。輪島の伝統工芸を買うことができる輪島朝市を除いて、ほとんどの通りに人の気配がなく閑散としていたのは、もったいないです。少なくとも100年くらいは保存されているであろう多くの家屋が並ぶ通りでさえ、当日は僕達以外誰もいませんでした。輪島といえば漆塗りですが、漆塗美術館はいくつか街中にあり、素晴らしい工芸品の全ラインナップを見ることができます。東京にあのような美術館兼ショップが存在すれば、大いに商売になるのではないでしょうか。今セレクトショップや百貨店では伝統工芸品の人気が高まっています。しかし、それらのショップは日本各地から様々な物を少しずつ集めてはいますが、大々的に輪島塗を紹介するスペースは見たことがありません。輪島の皆さん、チャンスですよ。

能登半島の先端に近い、この九十九湾の絶景を百楽荘で味わった
能登半島の先端に近い、この九十九湾の絶景を百楽荘で味わった
輪島にはこれらのような旧い軒先がたくさんあるのが魅力だ
輪島にはこれらのような旧い軒先がたくさんあるのが魅力だ

佐藤丈春(さとう・たけはる)
1976年東京生まれ。2005年に渡英、2007年に英国王立芸術院卒業。グローバル情報誌『モノクル』に創刊から関わり、ファッションディレクターとして7年間努めた後、2014年独立。現在は英国・欧州ファッションブランドの広告・カタログのスタイリングやアートディレクションを中心に活動する。

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