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連載コラム2016.10.26

連載コラム Vol.7 – 衣・食・住三拍子揃ったフィレンツェ

佐藤丈春佐藤丈春

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僕はフィレンツエに年2回出張しています。このルーティーンを2007年の1月に始めたので、今年で9年目になりますね。この街に来る理由は世界最大規模のメンズウエア合同展示会「ピッティ・ウオモ」を春夏(6月)・秋冬(1月)と開催するからです。

ピッティ・ウオモの歴史は1950年代に遡ります。第二次世界大戦後までは現在のようなイタリア・ファッション業界らしいものは無く、家族経営の小さなテーラーやシャツ、タイメーカーが戦争で破壊された国中に点在している状況でした。それらを集めて「イタリア製」ファッションを宣伝すべく、ピッティ宮殿(ルネサンス建築)にてアメリカからのバイヤーやジャーナリストを招待し(フィレンツエにはこの頃から既にアメリカからの観光客や商人が多く訪れていた)、1951年に最初のファッションショーを開催、大成功を収めたのがこのイベントの起源です。

フォルテッツァ・ダ・バッソの外観。城壁の一部がイベント会場への入り口になっている
フォルテッツァ・ダ・バッソの外観。城壁の一部がイベント会場への入り口になっている
日本の人気ブランド「White Mountaneering」とアディダスの共同コレクションのインスタレーション風景。Photo: Vanni Bassetti
日本の人気ブランド「White Mountaneering」とアディダスの共同コレクションのインスタレーション風景。Photo: Vanni Bassetti

今日に至ってはフォルテッツァ・ダ・バッソという、16世紀に建てられた要塞の跡地を会場にして毎シーズン約5日間開催、展示ブランド約1,200、訪問するバイヤー数は北欧、北南米、中東、アジアから合計約25,000人。これにプレス関係者を足し、総計約36,000人という規模になっているのです。それだけにピッティ・ウオモは、世界経済の「映写機」的な存在でもあります。2008年のリーマンショック直後にはアメリカから(伝統的にフィレンツエにとってのビッグ・サポーターです)の参加者数が半分くらいになりましたし、過去10年、中国人やロシア人バイヤーがより多く目につくようになりました。

新聞やテレビで報道されている世界経済の影響を間近に感じることができる場でもあるのです。実際に今年1月のアメリカからのバイヤー数は、景気に少し前向きな兆しを反映して前年比8%増。中国・ロシアからの参加者はやや減との報告がピッティ協会から出ています。急成長の勢いが少し落ちて来た中国、そして原油価格やルーブル価値の下落の影響を受けるロシアからの参加者数は今後減る一方なのでしょうか? 

因に日本からのバイヤー数は今年1月は800人強で、実は毎年確実に数字を伸ばしています。この800人強の中には日本の主要なセレクトショップや百貨店のバイヤーさん達も含まれており、皆さんが店頭で見かけるイタリア商品の多くはここピッティ・ウオモで展示されている物なのです。

会場内にひしめく多数のブランドの展示ブースから、僕の好きな英国ブランド「ドレイクス」をピックアップ。来年3月に東京に初の直営店オープン!
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フィレンツエは小さな街ですから、徒歩で街中を色々と探索できて便利です。車で街を出れば20分ほどでトスカーナの大自然を体験することができます。トスカーナ産のワインのクオリティには訪れる度に感動しますし、フィレンツエ(イタリア全土でそうですが)には小さな家族経営のレストランが沢山ありますから、現地でしか食べられないものを是非味わっていただきたいものです。僕の友人が多くこの街に住んでいましたが皆口を揃えて言うのが「衣・食・住3拍子揃った街」だということで、納得がいくのです。

ミシュランスターもついている「イル・サント・べヴィトーレ」のスパイシーパスタ。初めてここで食べましたが、僕にとっての新たな定番に決定!
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「ペンサーヴォ・ペッジオ」というレストラン(イタリア語で状況がもっと悪かったかも、という不思議な名前)でのホームメイド・パスタも忘れられない味となった
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同レストランにてこの地域伝統の「フィオレンティーナ・ステーキ」。フィレンツエに行った際には一度は試していただきたい
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1953年から経営している「ハリーズ・バー」。60年間ほとんど変わらない内装、サービスのレベルは必見。筆者にとってはネグローニが定番
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佐藤丈春(さとう・たけはる)
1976年東京生まれ。2005年に渡英、2007年に英国王立芸術院卒業。グローバル情報誌『モノクル』に創刊から関わり、ファッションディレクターとして7年間努めた後、2014年独立。現在は英国・欧州ファッションブランドの広告・カタログのスタイリングやアートディレクションを中心に活動する。

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